「人間に関する断章」 中村 稔 ■人間に関する断章 2002年2月20日 第一刷印刷 2002年2月28日 第一刷発行 ■著者 　中村稔 発行者 清水一人 発行所　青土社 A5版　320ページ ハードカバー ⭕著者 中村稔(なかむらみのる) 1927年生れ。詩人・弁護士。 詩集に『鵜原抄(高村光太郎賞)「羽虫の飛ぶ風景」(読売文学賞)「浮泛漂蕩(藤村記念歴程賞)「新輯・幻花抄」、評論に「宮沢賢治」「中原中也一言葉なき歌」「斎藤茂吉私論」伝記に「束の間の幻影・銅版画家駒井哲郎の生涯」(読売文学賞)などがある。 ⭕詩歌の言葉も「社会」に触れる 「愛について」「父について」「母について」「友情について」「青春について」「言葉について」など、全部で十二章からなる随想集。 まずは「愛について」。「愛」を主題にはじめて詩を書いたのは石川啄木。だが「愛」ということばは日本人にはなかなか理解できないものなので、そのことばのもついかがわしさを啄木は歌うにとどまった。高村光太郎も「愛」を歌うが妻・智恵子の「生身の人間としてもっていたにちがいない苦悩」を知るには至らなかった。著者は関連する詩歌を引用しながら書いていく。具体的で、わかりやすい。 本書は詩歌の心と作者の立場を十分にみきわめ、あるいはときほぐすことで、詩歌のことばがもつ「社会性」をもとらえることになった。