竹内邦夫 （日本美術院） 「十勝暁光」 ●山に思う 山には、神々が棲むという。人は、故郷の 山々を敬い、忘れ、”恐しんて来た。山に残る雪型を見て、種を蒔く時を知り、収穫の時を知ったという。人も自然の一部として、その恩恵を受けて生活して来た。高齢な自然条件の北国では、一層自然に逆らっては生きられない。 今はすっかり都会の生活に慣れきってしまった私だが、戦後、信州の山深い村で過ごした八年間の幼児体験が意識の中に有るのか、風景の取材というと、何故か北の方に足が向く。我が故郷とも思う信濃の山々は論の事、東北、北海道の山々は、何度足を運んでも、美しく魅力に溢れている。 新緑につつまれた春、雲海く夏、彩りの鮮やかな秋、白一価となる冬の山々。自然に対しいつも素直に生きたいと思う。そうすれば無言心な私にも、きっと山の神々も優しく迎えてくれ、いつの日にか、素晴らしい絵を描かせてくれるのではないかと思っている。 作者談 Ｇ0514