バックハウスは20世紀前半から中盤にかけて活躍したドイツのピアニストで、特にベートーヴェンの演奏で非常に高く評価されている。バックハウスの演奏は、構造的に非常に明快で楽譜に忠実。感情を過度に誇張するのではなく、楽譜に書かれた音符を厳密に、しかし豊かな音色で再現する姿勢が特徴。このCDの３つのソナタは彼が70代半ばでの録音だが、技術の衰えを感じさせない安定した演奏で「老巨匠の至芸」として称賛されている。ただ一部の批評家からは「やや機械的」「感情表現に乏しい」とされることもあり、ロマン派的な表現を好む人には、このストイックなスタイルが「硬い」と映ることも。リヒテルやグールド、あるいはケンプと聴き比べてください。 ヴィルヘルム・バックハウス（ピアノ） ベートーヴェン ①ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2「月光」 ②ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 Op.13「悲愴」 ③ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 Op.57「熱情」 録音：1958年10月（①②）、1959年10月＆11月（③）、ジュネーヴ デッカ国内盤（1997年製造） ※なおジャケでは①は1961年録音と記載されているが各種文献によると1958年録音のはず。