「学生叢書」とは、東京帝国大学経済学部教授・河合栄治郎が企画・編集し、1936年から1941年にかけて日本評論社より刊行された全12巻の教養書シリーズです。この叢書は、当時の大学生や旧制高等学校生を対象に、教養、生活、社会、歴史、科学など多岐にわたるテーマを網羅しています。 大東亜戦争の直前や戦時下では、ファシズムが肯定され、マルキシズムや自由主義が否定される風潮がありました。そのような時代背景の中で、精神的支柱を求めていた学生たちのために、河合は「学生叢書」を企画・編集しました。執筆陣には当時の最高水準の知識人が参加し、叢書の主導精神は理想主義、人格主義、教養主義でした。 「学生叢書」は当時の学生たちに歓迎され、ベストセラーとなり、増刷が相次ぎました。多くの学生や学徒動員で出征する学生にも、生きる意義と勇気を与えました。内容は知的生活論と人生論であり、現代でもそのまま通用するもので、戦後の知的生活論と人生論をリードすることになりました。なお、河合は「学生叢書」と同じ趣旨で『学生に与う』（日本評論社、1940年）も著しています。 ■収録タイトル: 『学生と教養』1936年12月　15編 『学生と生活』1937年7月　14編 『学生と先哲』1937年12月　14編 『学生と社会』1938年6月　17編 『学生と読書』1938年12月　19編 『学生と学園』1939年6月　28編 『学生と科学』1939年12月　20編 『学生と歴史』1940年4月　22編 『学生と日本』1940年8月　31編 『学生と芸術』1940年11月　35編 『学生と西洋』1941年4月　24編 『学生と哲学』1941年10月　28編 ■影響を受けた人物 ・中曽根康弘『政治と人生――中曽根康弘回顧録』講談社、1992年 ・わだつみ会編『学徒出陣』岩波新書、1993年